【連載小説】今日も女子校は平常運転

A Girls' School Comedy: Girls and Mistress, and Days

第100話(最終話) 新しい春

クラス替え発表=2年生初日の朝

掲示板の前で、自分の名前を探す声が飛び交う。
そんな中――

玲音「……ありました。みなさんと同じクラスです」

一瞬、頬が緩んだかと思えば、瞳が潤んでいく。

ひばり「おおっと!玲音ちゃん泣いてるッスよ〜!」
せいら「え、ここで?かわいいんだけど!撮っとこっと!」
玲音「ちょっ……やめてください……!」

泣き顔を茶化され、玲音は必死に袖で目元を押さえた。


席も決まっていない教室は、春のざわめきそのもの。
机を寄せて小さな島を作る者、窓辺でうとうと頬杖をつく者、黒板に新クラスの落書きを始める者まで、自由気ままに朝の余白を満喫している。

ひばり「ここ、陣取っとくッスかね。窓際二列目の法則!」

せいら「なにその根拠のない法則。……でも日当たりいいし、あたしがそこにするわ」

みう「日向ぼっこ席、すてきですぅ〜」

りりあ「りりあ、ドア近くで出入りの人観察するのぉ〜」

玲音「一度座ると、そのまま固定になりがちですから……仮置きでもバランスよく配置を」

せいら「さすが玲音、開幕から合理主義」

そんなふうに口を動かし、手は机を動かして、笑い声で隙間を埋めていく。
そのとき、扉がガラリと開いた

学生たちは一斉にざわつく。

「え?理事長?」「新担任じゃなくて?」「なんでこのクラスに……?」

慌てて近くの席に腰を下ろし、教室は一瞬で静まり返った。

理事長「みなさん、おはよう。そして進級おめでとう」

理事長はいつもの落ち着いた声で挨拶を始める。
生徒たちはぽかんとしながらも、「全クラスに直接挨拶して回ってるの?」「さすが理事長……」と感心していた。


凛とした声が響く。
理事長らしい挨拶が続き、学生たちは思わず聞き入っていた。
だが、最後の一言がすべてをひっくり返した。

理事長「さて。最後に大事なことを一つ」

黒板にチョークを走らせ、自らの名前を書く。

学生A「……え?なんで名前を……?」
学生B「字うまっ!」

そして、衝撃の一言。

理事長「今日からこのクラスの担任になった朱雀小路よ。よろしくね

バチコーン!と満面の笑みでウインク。
時間が、止まった。

全員「…………………………………………は??」

次の瞬間、蜂の巣をつついたような混乱。

せいら「どういう人事なのよ!!うそでしょ!?聞いてないんだけど!」

ひばり「ウチら……これから毎日理事長監視下ッスか!?心の準備ゼロなんスけど!」

みう「り、理事長室に帰ってほしいですぅ〜!あっでも一緒もいいかもぉ〜……いややっぱり緊張しますぅ〜!」

りりあ「りじちょーに毎日あえるのぉ〜♡」

玲音「えっ……えっ……!?担任業務まで……!?ご多忙では……!?事務負荷の配分が……!」

前列の子は椅子から半分立ち上がり、後列の子は友だちの肩をバンバン叩く。
「マジ?本当に?」「学校ってそういうことある?」
黒板の白い文字が、視線の嵐の中心にしっかりと立っている。

理事長は微笑みを変えず、ざわつく群像を余裕の視線で見渡す。

理事長「驚かせてしまったわね。詳しいお話は、自己紹介とオリエンテーションのあとで。あ、出席番号の並びで仮席に座って。はい、そこ、通路塞がない。落ち着いて」

ひばり「すでにこのクラスを掌握してるッス……!」

せいら「くっ……悔しいけどやっぱ仕切るのうまいわ……!」

みう「声のトーンが落ち着きますぅ……」

りりあ「はいっ、仮席すわりましたぁ〜」

玲音「(頭を抱えながら)……指示が明瞭で助かります……」


朱雀小路・キティ・アレクサンドラ――
その白い筆跡が黒板に残る。

理事長は微笑んだまま、動揺するクラスを余裕の視線で見渡している。

ひばり「……始まっちゃったッスね、二年」

せいら「始まったわね……ド派手に……」

みう「でも、ちょっとわくわくしますぅ」

りりあ「毎日たのしいの確定なのぉ〜」

玲音「変化は、きっと学びを連れてきます。……だから、きっと大丈夫です」

窓の外、満開の桜が風に揺れる。
ひらひらと舞い込む花びらが、新しい春を告げていた。

こうして彼女たちの2年生としての日々が、鮮やかに幕を開けた。

第99話 最後の夜

談話室・夜

春休み最後の夜。
5人はいつもの談話室に集まり、ジュースとお菓子を囲んで“進級前夜祭”をしていた。


ひばり「ウチ、2年になったら真面目にやるッス!絶対ッス!」
せいら「ふん、どうせ3日で終わるわね」
みう「清楚ひばりちゃんモード、またみたいですぅ〜♡」
りりあ「りりあ、明日から先輩なのぉ〜♡」
一同「一番無理がある!!」
玲音「(小さく笑って)……まあ、期待しています」


せいら「まあ、2年になったらあたしが引っ張ってあげるわ」
ひばり「お?リーダー気取りッスか?」
せいら「当たり前でしょ!女子校においてあたしの女子力はヒエラルキーの頂点に君臨するのよ!
ひばり「(吹き出しながら)ヒエラルキーって……ピラミッドの頂点に座って玉座にいる自分想像してるッスね?」
せいら「……したけど何か!?」
みう「ふふ♡かわいい妄想ですぅ〜」
せいら「妄想じゃないっつーの!!」


りりあ「じゃあ、りりあは先輩風吹かせるのぉ〜♡」
(ソファの上に立ち上がり、ジト目で腕を組む)
りりあ「一年生はぁ〜、はやくジュース買ってこいなのぉ!」
一同「悪い先輩だ!!」

玲音「その態度は、指導対象になりますね……」
りりあ「やだぁ〜♡おこられちゃうぅ〜♡」


みう「わたし、2年生になったらもっとふわふわお姉さんになりますぅ♡」
ひばり「……これ以上ふわふわしたら、宙に浮くんじゃ……」
せいら「え、すでに地面に足ついてないんじゃない?」
玲音「……確かに、浮遊感はありますね」
みう「えへへ〜♡」


ひとしきり大騒ぎしたあとは、それぞれが思い思いの姿勢でごろごろ。
ひばりはソファに横たわり、せいらはこたつでスマホを眺め、みうはクッションを抱いて丸くなり、りりあはポテチ片手にテレビをつけ、玲音はみんなを見回して小さくため息をつく。

昼間のにぎやかさが嘘のように、少しだけしんみりとした空気になる。


玲音「……いよいよ明日から、2年生ですね」
ひばり「ウチら、なんだかんだ生き延びてきたんスよね」
せいら「生き延びたって言い方やめなさいよ!」
みう「でも〜、なんだか感慨深いですぅ♡」
りりあ「りりあ、先輩って呼ばれるの楽しみなのぉ〜♡」

笑い声と小さな不安が入り混じり、
それぞれの胸に“新しい春”への期待が芽生えていた。

こうして、春休み最終日の夜は、ゆるやかに、更けていった。

第98話 やっぱりあなただったのね

春の陽気に包まれた京都の街。
玲音のテキパキしたガイドで観光は順調に進み、昼には精進料理の店で一息ついていた。
畳の間でくつろいでいると、ひばりがふと身を起こす。

ひばり「……なんか朝から視線感じないっスか?

一瞬、全員が顔を見合わせる。
言われてみれば、どこか背筋にピリッとした感覚があった。

せいら「やっぱり、気づいてたのね……」
みう「わたしも〜……なんか気になるんですよぉ」
りりあ「りりあ、さっきから背中がくすぐったいのぉ」
玲音「(小声で)……あそこの柱の影です」

次の瞬間、人影がサッと隠れるのが見えた。
全員に心当たりがあった。
アイコンタクトで「見なかったことに」しつつ退店。
路地を曲がって息をひそめ、タイミングを狙う。

人影が追いかけてきた瞬間――。
「捕まえた!」

5人が飛び出し、ついに“犯人”を取り押さえた。


【尋問開始】

捕まったのは――やはり理事長
肩を押さえられ、観念したように視線を泳がせる。

理事長「ち、違うのよ!これは偶然……!」
せいら「何が違うのよ!……何やってんの!尾行なんて!」
ひばり「理事長、マジでスパイ映画っスよ!」
玲音「なぜ、私たちを尾行する必要があるんですか?」
みう「えぇ〜……心配してくれてたんですかぁ?」
りりあ「理事長、こそこそするの似合わないのぉ」

理事長「あ、あのね……!あなたたち、すごく楽しそうだったし……学生だけのほうがいいかなって思って……でも、気になるじゃない……?」
せいら「……まあ、わからんでもないわね」
理事長「それに、京都といえば私でしょう?なのにあなたたち、一言も声をかけてくれないじゃない……(しょんぼり)」

一同「かわいいかよ!!」


結局、午後から理事長も合流することになった。
玲音が作ってきた旅程表を手渡すと、理事長の目が輝いた。

理事長「なるほど、まずは清水寺、それから八坂神社……このルートならこちらの脇道を抜けると効率的よ。あぁ、嵐山ならこの茶屋で休むべきね!祇園はこの通りを歩くと雰囲気が最高なのよ!」

完全に庭を案内するような口ぶり。
自信満々に語る姿は、メンバーの誰よりも目が輝いていた。

みう「理事長……めっちゃ楽しそうですぅ♡」
ひばり「ウチらよりキラキラしてるッス」
りりあ「乙女モード全開なのぉ♡」
せいら「……めんどくさいけど、まぁ……いると楽しいわね」
玲音「確かに……旅程の完成度が一気に上がりました」

ひそひそ声で笑い合う5人。

理事長「……何か言ったかしら?」
5人「い、いえ!!」


【そして旅のおわり】

夕方、旅の終わりが近づく頃。
理事長は京都の街並みに視線を残したまま、言った。

理事長「私は実家に泊まっていくから。気をつけて帰りなさいね」
一同「はい。また学校でお会いしましょう」

理事長「ふふ。次に会うときは2年生ね。楽しみだわ。それじゃあ」

軽く手を振り、彼女は静かに人混みに消えていった。

その背中を見送りながら、胸にひとつの思いが広がる。

(そっか……もう1年も終わりだったんだ……)

春の風が吹き抜け、ちょっと成長した気持ちになった。

第97話 忍び寄る影

京都・安ホテル到着

USJで全力を尽くした一行が、夜の京都に到着。
学生向け格安ホテルでチェックインするはずが――。

受付「お客様、朱雀小路様のお知り合いですよね?どうしてわたくしどものようなホテルに……?」

一同「……(白目)」

すでにある者からの根回しが済んでいたらしく、スタッフ全員が恐縮モード。

受付「わ、わたくしたちの不手際で……高級旅館の水準には及びませんが……!」
スタッフA「せめてお部屋には花を……!」
スタッフB「お茶菓子、急ぎでご用意を!」

ひばり「なんで安ホテルで学生が接待受けてるんスか!?」

恐縮されることにこちらが恐縮し、もはや誰も目を合わせられない。
「地獄の謙遜スパイラル」に巻き込まれつつも、なんとか部屋に到着。


雑魚寝5人一部屋。 格安素泊まり部屋のはずが――。

片隅の座卓には高級和菓子
窓際の広縁には花瓶に花

せいら「……これで格安って言われても、逆に落ち着かないわよ!」
ひばり「貧乏学生の部屋にゴディバ置かれた感じッス……」
りりあ「りりあ、お花と一緒に写真撮るのぉ〜♡」
みう「もう……わたしたち、どう見ても特別扱いですよぉ〜♡」


なんとか部屋に通され、明日の打ち合わせ開始

その場に座り込み、翌日の京都観光プラン会議がスタート。
しかし――。

ひばり「とりあえず清水寺とか?飛び降りたるッス!(だめです)」
せいら「舞妓体験とかもあるでしょ。かわいくなるやつ!」
みう「カフェで癒されたいですぅ〜♡」
りりあ「八ッ橋食べ放題がいいのぉ〜♡」

完全ノープランの自由発想に、玲音が深いため息をつく。


【玲音の旅程表】

玲音「……仕方ありません。実は事前に作ってきました

ごそごそとバッグから出てきたのは、きっちり表紙付きの旅程表。
細かく時刻表まで計算され、寺社仏閣、文化財見学、伝統体験……ぎっしり詰まった行程。

抑揚のないAIのような口調で説明が始まる。
玲音「まず朝8時に出発し、清水寺文化財を拝観。その後は三十三間堂金閣寺……昼食は精進料理を予約済みでして……」

一同「修学旅行よりまじめだ!!!」

玲音「えっ……だ、だめでしたか……?」
しゅんと肩を落とす玲音。

一同「……かわいいから許す!

せいら「……いやいや、許す!じゃないのよ!」
みう「しゅん玲音ちゃん……癒やされますぅ♡」
りりあ「がんばったのにねぇ♡」
ひばり「ごめん玲音!ありがたいけど!もっとユルくていいッス!」


最終的に――。

みう「じゃあ……映えカフェをルートに入れて〜♡」
りりあ「りりあ、インスタ風写真撮るのぉ〜♡」
せいら「着物レンタルも入れなさいよ!」
ひばり「土産屋さんももちろん寄りたいッス!」

怒涛の修正をテキパキとこなす玲音。
玲音「……はい……ここをこう直して……1/3は変更になりますね」

ひばり「ありがと玲音!やっぱ頼りになるッス!」
玲音「(ほんのり微笑む)……ふふ、私たちらしい旅になりそうです」
ひばり「頼れるガイドッスね!」
せいら「これは修学旅行超えたわね……」
りりあ「明日が楽しみなのぉ〜♡」
みう「みんなで行くから、なんでも楽しいですよぉ〜♡」


窓の外には京都の夜景。
豪華すぎる和菓子と、どこか安っぽい布団。
ちぐはぐな空間に笑い声が響く。

こうして、カチカチの修学旅行プランは、ゆるふわノリの“自由すぎる観光プラン”へ変貌した。
格安ホテルなのに高級旅館の空気が漂う部屋で、笑いと混乱に包まれながら夜は更けていった。

第96話 1年生最後の遠征:USJ編

【入場前のカチューシャ攻防】

春休みの人波でごった返すUSJ
入場ゲート前、りりあとみうは早々に「桃の姫風」カチューシャを装着。金色のティアラがやたら似合っている。

りりあ「りりあ、大魔王にさらわれるのぉ〜♡」
みう「わたしも〜♡ 助けてくださぁい〜♡」

二人がキラキラ視線を向ける先――残りの三人。
しばらく抵抗したものの、結局購入。

ひばり(赤いリボンの白ネコ耳を押さえて)「……照れるッス……」
玲音(魔法動物ふわふわカチューシャ装着)「これは……落ち着かないですね……」
せいら(大きなビーグルのタレ耳をつけて)「だ、誰が犬っぽいのよ!ほっといて!」

周囲の学生らしき来場者たちから「あの子らレベル高くない?」とヒソヒソ声。
顔を真っ赤にしつつも、どこか満足げな5人だった。


【絶叫と失神】

園内に入り、早速「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド〜バックドロップ〜」へ。
ひばりが玲音の手を強引に引き、待つ暇もなく搭乗。

ひばり「いっけぇぇぇええ!!!」
玲音「ま、待っ……きゃああああああああ!!!!

後ろ向きで空へ放り出され――。
玲音、初のジェットコースターで真っ白に失神。

玲音「……」

ひばり「玲音!すまんッス!!まさかここまでとは!!」
(スタッフに心配されるレベル)


せいらのホラーチャレンジ】

次は「スケアクロウ:ザ・リーピング
せいら「ふ、ふん!こんなのどーせ子供だましよ!」
と言いつつ膝が爆笑している。普段の強気はどこへやら。

入場直後、10秒と経たずに情けない「ひいぃ~……」という悲鳴が聞こえてきた。
半泣きでひばりの袖を握りしめて離さない。
出口に出るころには、涙でアイラインがほとんど消えていた。 暗闇と音響に押しつぶされ、半泣きで出口へ。

せいら「こ、こんなのずるいわよっ……っ!」

ここぞとばかりにひばりがイジリたおす。みうはスマホで連射モード。
ひばり「(爆笑)せーら、めっちゃ泣いてたッスよ!」
せいら「うるさいわね!!みうも撮らないで!!」


【パレードとの遭遇】

ちょうど昼過ぎ、キャラクターたちが繰り出すパレードに遭遇。
りりあとみうは手を振りまくり、キャラからハイタッチをもらってはしゃぎ倒す。
せいらも最初は興味ないフリをしていたが、ビーグル耳が目立ったのか、犬キャラから特別にポーズをもらい真っ赤に。


玲音(隣で微笑みながら)「……楽しいものですね」
ひばり「玲音、今日めっちゃ笑顔多いッスよ」
玲音(頬を赤らめ)「……気のせいです」


【夕方、USJツアーも終盤】

夕暮れ近く。
ひばりはテンション上げすぎて、とうとうぐったり。

ひばり「うぅ……気持ち悪い……テンション高すぎたッス……」
みう「(心配そうに背中をさすりながら)だいじょうぶですかぁ〜?」
玲音「水分を……こちらに」

結局、休憩スペースで全員がひばりの復活を待ち、再び夜のパークへ。
ライトアップされた街並みに、誰もが心を奪われるのだった。


夜のイルミネーションの下、笑い合う5人。
玲音は一日を通して笑顔が多く、せいらは涙と照れで忙しく、ひばりは全力で突っ走ってダウン。
りりあとみうは姫カチューシャでずっとご満悦。

大騒ぎしながらも、心に残る一日になった。
その笑顔は、春の旅の序章を彩るにふさわしいものだった。

第95話 やっと決まった旅行先

春休みの遠征計画は、ようやく佳境に差し掛かっていた。
机の上にはパンフレットやスマホがずらりと並び、全員が真剣(?)に検討中。

みう「やっぱり〜、無難にディズニーランドとシー……ですよねぇ♡」
玲音「初日にランドで思い切り楽しんで、二日目はシーで落ち着いた雰囲気……。合理的だと思います」
せいら「うん、定番すぎるけど、なんだかんだハズレはないわよね」
りりあ「りりあ、ミッキーに会いたいのぉ〜♡」

空気はすっかり“ディズニーで決まり”に傾きかけていた。


ふと、ひばりがスマホ画面をみんなに見せながら口を開く。

ひばり「……あれ?みんな、ちょっと待って。これ見てほしいッス」

全員が顔を寄せる。
画面に表示されていたのは「USJと京都観光セットプラン」。

ひばり「ほら、初日はUSJでテンション全開!次の日は京都でお寺とか和の雰囲気で大人モード……。これ、全員の希望、網羅してるッスよ」

みう「わぁ……たしかにっ♡」
玲音「アトラクションと文化観光の組み合わせ……効率的ですね。しかも移動の新幹線チケット付き」
せいら「なるほど……大人っぽさも、遊びも、どっちも楽しめるってわけね」
りりあ「りりあ、舞妓さん体験したいのぉ〜♡」

しばしの沈黙のあと、全員が視線を合わせる。
自然と頷きが重なった。


準備も進み、宿泊先を探していたときのこと。
検索画面に、ふと見慣れた文字が映る。

朱 雀 小 路 旅 館

玲音「……これは……」

全員の背筋が一瞬で凍りついた。
思い出すのは、夏に泊まったあの高級旅館。
理事長がいつのまにか手配した、あの圧倒的な格式と財力。

ひばり「……そういえば、理事長って“朱雀小路家”のお嬢様だったッスよね……?」
せいら「京都行きって、つまり……お膝元……?」
みう「ど、どうしましょう……なんだか不穏な予感が……」
りりあ(小声)「……理事長にバレたら……また……」

全員が青ざめる。
数秒の沈黙のあと――。

ひばり「……よし!見なかったことにするッス!!
せいら「そうね!普通の学生向けの安ホテルにしましょ!」
みう「そ、それが一番ですぅ〜♡」
玲音「……賢明な判断です」


こうして、最終的な行き先は USJ→京都観光 に決まった。
テンションも大人感も、みんなの望みが一つにまとまった形。

談話室には安心と高揚が入り混じった空気が漂っていた。
それぞれが期待を胸に笑い合う――けれど、

進級に向けた不安に気づかないふりをしているだけなのかも。 ただ、その予感だけが、淡い春の夜に静かに広がっていた。